column 1 住宅設計の基本的な考え方 12

間取り

住宅造りは住む人と建築家との共同作業と考えます。 お互いの意思の疎通を図り、率直な意見を交わしながらひとつひとつの住宅をつくりあげていきます。 風の流れ・日光など自然の力を最大限に利用し、自然の恩恵を大切にした住まい造りをめざします。

「その土地の気候風土に素直に従う」まずはそれが第一です。いわゆる民家の考え方、昔はそれぞれの土地に合ったいろいろなバリエーションを持った民家が存在しました。今は日本全国どこに行っても同じような建物が並んでいます。九州には九州の、鹿児島には鹿児島にあった形の住宅であるべきと考えます。

鹿児島のように高温多湿のところはなるべくオープンな間取りが良いと思います。部屋と部屋をあまり細分化することなく、なるべくオープンにして普段はワンルーム的に使い、必要な時だけ仕切れるようにする。たとえば、冬の朝の暖房時だけ仕切れるようにする、といった使い方ができるような間取りが良いと思います。したがって建具は開けているのが普通で開けていても邪魔にならない引き戸を多用することとなります。壁を大事にしたいので手間はかかりますが壁の中に引き込む、引き込み戸をよく用いることになります。また床にレールをつけたくない事、音が静かなことなどの理由から吊りレールを多く用います。

まだまだ鹿児島では街の中心部でもない限り窓を開ければ、気持ちの良い風が入ってくるところが多いと思います。外部や庭とのつながりを重視したいため、南側に大きな開口部をとります。またサッシを壁のなかに引き込むことによって、サッシが視覚的になくなり、中の空間と外の空間が一体となって気持ちの良い空間が生まれます。日本人は古来、豊かな四季を上手に住まいのなかに取り入れることによって生活を豊かにしてきました。高気密住宅のように締め切って外部との対話を拒絶するような家よりも、家が深呼吸するように、庭の緑や風の流れを大きな窓から取り入れる家のほうが心地いいのは明らかでしょう。

伊敷台の家

伊敷台の家

居間・食堂・キッチンをオープンにして
階段も居間から

春日町の家

春日町の家

広い窓と深いひさし
和の雰囲気に欠かせないもの

コートのある家

コートのある家

サッシを壁の中に引き込むことで
内外が一体となる